2026年9月25日
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日立製作所

3Dデジタルツインは熟練者の見る順を教えられる

AI が描いたイメージ

日立は、熟練者が3Dデジタルツイン上で設備を確認した視点移動や文書の選び方を操作ログから抽出し、新人が同じ情報探索の順序をたどれる手法を開発した。鉄道車両の模擬検証では、必要な情報に到達する時間が中央値で60%短くなり、口頭でしか伝えにくかった「どこを先に見るか」を教育資産にできる可能性が示された。

保守・点検の新人は、3Dモデルやマニュアルを渡されても、どの部品を、どの順番で見ればよいか分からないことがある。必要な資料を探し回るか、熟練者に聞くしかない。熟練者の確認手順は、口頭でその場ごとに伝えられ、教育のたびに限られた人の時間を使ってきた。

マニュアルに書きにくい「見る順」

保守・点検では、設備の構造、点検箇所、過去の履歴、関連文書を結び付けて判断する。マニュアルは標準的な手順を示せるが、設備のどこを先に見れば情報を絞り込めるかまでは書き切りにくい。

3Dデジタルツインは、設備をデジタル空間に再現したものだ。位置や構造を理解する助けになる一方、熟練者がなぜその部品を先に確認したのか、どの資料を選んだのかを、モデルだけで伝えることはできない。

操作ログを教育資産に変える

日立が開発したのは、熟練者の「勘」をそのまま自動化する方法ではない。熟練者が3Dデジタルツイン上で何を見たかを記録し、情報を探す順序として残す方法である。

記録するのは、カメラをどう動かしたか、部品を表示・非表示にしたか、分解したか、どの文書を開いたか、何を検索したかといった操作だ。熟練者が有用だと判断した時点の視点、表示部品、参照文書を結び付けて抽出する。

経験の浅い作業者は、困っていることを選ぶ。すると支援情報が一覧で表示され、熟練者が確認した場面が3Dデジタルツイン上に再現される。鉄道車両の保守・点検の一部作業を模擬した検証では、必要な情報に到達するまでの時間が、熟練者の知見を示さない場合と比べて中央値で60%短くなった。日立は、経験の浅い作業者でも熟練者に近い水準で情報を確認できる可能性を示したとしている。

画像: 図1 本手法による熟練者の知見継承と作業効率化のイメージ
図1 本手法による熟練者の知見継承と作業効率化のイメージ 出典: 3Dデジタルツイン上の操作ログから実践知を抽出し、保守・点検現場の知見継承を支援する手法を開発(日立製作所)

探し回らない点検準備へ

この方法が現場で成り立てば、鉄道車両の検修庫で、新任の作業者が「この部位をどう確認するか」を選び、端末に再現された分解状態の車両モデルと関連文書を見ながら準備を進められる。熟練者は、同じ初歩的な探索手順を繰り返し説明せずに済む。設備を多く持つ事業者にとっては、熟練者の操作を再利用できる教育資産にできる。

ただし、操作ログを残すだけでは足りない。設備の変更や文書の改訂に合わせて内容を更新し、熟練者の手順が適切だった場面を選ぶ必要がある。実機での手順と安全判断を現場で確認する運用も前提となる。日立は今後、現場での検証を進め、蓄積したOTナレッジとAIエージェントの組み合わせを目指す。成果の一部はIEEE ITSC 2026で発表予定である。

出典

日立「3Dデジタルツイン上の操作ログから実践知を抽出し、保守・点検現場の知見継承を支援する手法を開発」